人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

「トランプ現象」は、欧米では民主主義に対する脅威として受け止められました。アメリカのジャーナリストたちや、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』などの既成メディアは「西洋では民主主義が脅かされている」と語るでしょう。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)もある種の衝撃でした。そして、イギリスが、今どのように機能しているのか、私たちにはよくわかりません。

 フランスで政治に関する記事などを書くとき、私はフランス議会やマクロン大統領に対して「民主主義がうまく機能している」とは決して評価しません。

 客観的なデータにも目を向けてみましょう。まず、我らがリーダーであるアメリカに焦点を当てます。ジョークを込めて「我らが愛すべきリーダー」とここでは言いますが、現在のアメリカの状態はどうでしょうか。

 現在のアメリカは、不平等の国です。1980年代以降、経済的不平等が増大し、世界史上、他に例を見ないほどです。2010年以降も経済格差は悪化していき、その格差は、平均寿命の差にまで転化されました。アメリカでは死亡率が上昇していないのに、です。

 つまり、アメリカにおける大規模な社会的・経済的後退は、アメリカを歴史上の何か別のものに変えてしまいました。今のアメリカはもはや、1950年代、60年代、あるいは70年代に、私たちが愛したアメリカではありません。不平等が広がり、自由民主主義が変容した結果、私が「リベラルな寡頭制」と呼ぶものに、アメリカは変わってしまいました。

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