さらに、前述の第二、第三の類型では、政治資金規正法上の記載もせずにその収支を隠していたのであるから、悪質性も十分だ。また、第一の類型でも、正当な選挙活動に使っていなかったとすれば、単なるミスや失念という言い訳は通らない。偽りその他の不正により本来支払うべき所得税の支払いを免れたということになるはずだ。
つまり、いずれのケースでも脱税の罪に当たる可能性は極めて高いと言わざるを得ない。
東京地検は、今回の裏金疑惑のうち政治資金規正法違反についての捜査を終えた。会計責任者7人と、議員では、池田佳隆衆議院議員、谷川弥一前衆議院議員、大野泰正参議院議員の3人が立件されたが、安倍派5人衆や下村博文元文部科学相・安倍派元事務総長、塩谷立自民党元総務会長・安倍派元事務総長らの大物議員は無罪放免となった。
一方、脱税疑惑については、本格的な捜査が行われた形跡はない。
ここまで読んで、読者の皆さんはどう思うだろうか。
政治資金規正法違反でさえ、「秘書がやったと言えば逃げられるのか」「トカゲの尻尾切りだ」という批判が渦巻いている。世論調査で自民党に政治改革はできると思うかと聞けば、これまた大半の人ができないと答える。テレビの街頭インタビューを見ても、ストレートに自民党や岸田文雄首相を批判している人がほとんどだ。
政治への信頼は文字どおり地に落ちた。内閣支持率も岸田政権誕生以来最低水準に落ち込んでいる。ここまで来たら、岸田首相も生半可な対応では済まないとわかってはいるだろう。しかし、「火の玉になって」という言葉とは裏腹に、真相解明は時間稼ぎに終始し、改革の本丸である企業団体献金の禁止や政策活動費の廃止についてはいまだに抵抗している。
彼の行動を見ていると、自民党が権力を握っている限り、国民がどれだけ怒っても何の意味もなさず、「民主主義」を根底から否定する政治が延々と続くのだということがよくわかる。
その岸田首相の頭の中にあるのは、解散総選挙での起死回生の復活劇とそれによる秋の自民党総裁選における再選だ。