古賀茂明氏
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 2月1日、市民グループ「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」(代表・藤田高景氏、告発代理人弁護士・大口昭彦氏、一瀬敬一郎氏、長谷川直彦氏)は、自民党安倍派のいわゆる5人衆(萩生田光一自民党前政調会長、西村康稔前経済産業相、松野博一前官房長官、高木毅自民党前国会対策委員長、世耕弘成自民党前参議院幹事長)を含む安倍派の議員・元議員計10人を「裏金・脱税」で東京地方検察庁に刑事告発した。

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 同会の代表・藤田氏は「今回の自民党裏金疑惑は、倫理の底が抜けた、非常識極まりない行為。法律違反であり、明確な犯罪行為だ」「説明責任を果たさぬ政治家は永田町から退場してもらうしかない」と憤りを込めて語った。同氏によれば、多くの市民から怒りの声が寄せられていて、これは何とかしなければと立ち上がったそうだ。

 実は、私も藤田氏から声をかけられ、当日の記者会見に臨んだ一人だ。正直言って、居ても立っても居られないという気持ちだった。脱税については、これまで誰も刑事告発していなかったからだ。

 テレビの街頭インタビューでも、今回の裏金疑惑については、ほとんど批判一色である。

 会社勤めの人は、すべての所得を把握され、そもそも脱税の機会さえ与えられない。140万もの事業者がインボイス導入への対応で一円単位で消費税納税のための帳簿を整備する複雑な仕事を初めて経験し、悲鳴を上げている。

 それを脇目に、国会議員は、パーティー券収入の一部を裏金として隠し、好きなように使っていたが、安倍派幹部という重責を担う議員でさえ地検はお目こぼしにした。

「信じられない!」という声が上がっても、飼い慣らされた政治部記者や自民党の御用コメンテーターたちは、「秘書が知っているだけではダメで本人の関与を立証するのは難しいから立件はできない」とか、「そもそも政策活動費の使途は届けなくても良いから、政策活動費を政党支部として受け取ったと言って報告書を訂正すれば何の問題もない」とか、「何でもかんでも立件するわけにはいかず、4000万円、あるいは3000万円を超えなければ無罪放免になるというのが相場だ」などというようなことをわけ知り顔で解説していた。

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3000万円までなら立件しないのは検察の怠慢でしかない