前にも述べたとおり、テレビや新聞では、政治家の収入は「政治資金」だと報告しさえすれば非課税になるというような情報が垂れ流しになっていたが、これは完全な「フェイク」である。

 確かに、政治資金規正法上は、政治資金収支報告書に収入として記載し、かつそれが政策活動費として使われた場合は、使途を届けなくても問題はない。

 しかし、だから、何に使っても非課税になるとはどこにも書いていない。

 正確に言えば、政治家の収入について、非課税で申告・納税が不要になるという根拠になり得るのは、所得税法第9条第1項第19号以外には存在しない。

 そして、その条項に何と書いてあるかと言うと、

「公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の適用を受ける選挙に係る公職の候補者が選挙運動に関し法人からの贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で、同法第百八十九条(選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出)の規定による報告がされたもの」とある。

 わかりにくいかもしれないが、簡潔に言うと、非課税となるためには、

  1. 公職選挙法の適用を受ける選挙に関して
  2. 法律で認められた範囲での選挙運動に関連する収支であり
  3. その収支報告書が提出されている

 という3つの要件を「すべて」満たしていなければならない。

 したがって、政治に関連する支出なら何でも良いわけではないことは明らかである。

 私的な支出が対象にならないのはもちろん、単なる議員仲間の集まりでの飲食費でも対象外だし、選挙のためであっても有権者や地方議員の買収は認められていない行為であるから、これも対象外だ。また、政治目的でも、「政治工作」などへの支出も不可である。

 さらに、先に解説した3つの裏金類型のいずれにおいても、公職選挙法上の報告書が出されていないので、その一点をもってしても非課税の条件を満たしていない。

 結論から言うと、今回明るみに出た裏金はいずれも所得税法上の非課税の要件を満たしていないから、明らかに課税対象である。税務当局は速やかに課税処分を行うべきだ。

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脱税疑惑について本格的な捜査が行われた形跡はない