アイドル時代の国生さゆり (C)朝日新聞社
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 2月14日はバレンタインデー。昭和生まれの人たちにとっては、バレンタインデーといえば国生さゆりのヒット曲「バレンタイン・キッス」で、サビを思わず口ずさんでしまったり、脳内で再生されたりするのではないだろうか。なぜバレンタインデーの大定番曲になったのか? その理由を過去の記事から振り返る(「AERA dot.」2021年1月1日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。

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 2月14日はバレンタインデーだ。その盛り上がりに長年、貢献してきたのが国生さゆりのデビュー曲「バレンタイン・キッス」である。テレビのチョコレート特集では必ずというほど流れ、この時期の風物詩といっていい。

 イベントソングとしての定番度では「クリスマス・イブ」(山下達郎)に匹敵するだろう。あるいは「冬の広瀬香美」「夏のTUBE」のように「バレンタインの国生」と呼ぶこともできそうだ。

 そんな「バレンタイン・キッス」が発売されたのは、86年2月1日。つまり、34年にわたってこの時期に流れ続けているわけだ。この曲以外にもバレンタインものはあるのに、この強さは何なのか。そのあたりを検証してみたいのである。

 まず、作詞者の秋元康はこんな分析をしている。

「彼女はそんなに歌が上手い方ではありませんでしたので、何かムーブメントと一緒に売り出さないと売れないなと思い、バレンタインデー用に書き下ろしました。(略)彼女の歌のあまり上手くないところが逆に効を奏して“バレンタインデー・キッス”という部分の、少々音をハズした不安定な感じがこの曲をヒットに導いたと言えます。アイドルの曲は通常、仮歌を入れる段階では音楽大学を出たおねえさんが譜面通りに歌ってくれるのですが、それをそのまま歌っても面白くない。つまり、彼女のあの不安定さがアイドルらしい“味”を出したと言えるんじゃないでしょうか」

 02年に作詞活動20周年を記念して編まれたベスト盤「秋元流」の歌詞カードに記された彼自身のコメントだ。
 

秋元とそのスタッフたちの慧眼

 国生はおニャン子クラブからソロデビューした3人目にあたるが、第1号の河合その子は歌唱力が高く、次の新田恵利は圧倒的人気があった。そこを補うべく、季節のイベントと結びつけたわけだ。

 さらに、渡辺美奈代と白石麻子をバックコーラスとして参加させ、国生にはない正統的アイドル性を付け加えた。とまあ、使えるものは何でも使えという発想でヒットを狙ったのである。

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国生のために書かれたものではなかった