畳店だった空間を利用し、加藤翼さんが運営しているカフェギャラリー「muun」(写真:加藤翼さん提供)
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 空き家をめぐる課題解決に寄与する画期的な不動産マッチングサービスが全国的な広がりをみせている。登録料も利用料も全て無料。利益を最優先しないサービスを支える「お金以外の価値」とは。AERA 2024年2月12日号より。

【写真】古賀詩穂子さんの夢を具現化した名古屋市内の本屋「TOUTEN BOOKSTORE」

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 人口減少などによって増え続ける空き家の有効活用と利用促進を図る斬新な取り組みに注目が集まっている。さかさま不動産は、家主が借りたい人向けに不動産情報を紹介する従来のシステムとは逆に、借りたい人の情報を家主側に発信するウェブサイトを運営している。借り手が物件を選ぶのではなく、借り手を選びたい、と考えている家主のニーズに応える、まさに「さかさま」の発想で生まれたサービスだ。

 サイトには「子どもと高齢者が集まる学習塾を開きたい」「気軽に落語や音楽に触れて、地域交流できるスペースを作りたい」「また明日から頑張ろうと思える飲食店を作りたい」といった、それぞれの「やりたいこと」や「やりたい理由」、希望する空き家の広さやエリアなどをつづった「借りたい人」のリストが並ぶ。中心層は20~30代。夢の実現に向けた自己アピールは熱を帯び、それぞれの個性もにじむ。

 一方、家主は空き家の所在地情報などを不特定多数にさらす必要がなく、人物像を把握した意中の借り手と交渉に臨むことができる。家主に安心感と選択肢を提供することで潜在的な「貸したい思い」を掘り起こすだけでなく、借りたい側の思いにも丁寧に寄り添うことで夢の実現の後押しにもなるこのサービス。登録料も利用料も徴取せず、無償で社会に開放されている。

 サービスを開始した2020年6月以降、マッチングが成立したのは計24件(1月5日現在)。契約成立第1号の古賀詩穂子さん(32)は、コミュニティが生まれる持続可能なまちの本屋さんを開業したいと応募。「夢をかなえたい人の背中をそっと押してくれる、そんな人の温かみが感じられるサービスだと思いました」と振り返る。

 さかさま不動産を運営するのは株式会社「On-Co」(三重県桑名市)。同社は日本パブリックリレーションズ協会主催のPRアワードグランプリ「グランプリ」、環境省主催のグッドライフアワード「環境大臣賞」、国土交通省主催のまちづくりアワード「特別賞」、日本経済新聞社主催の日経ソーシャルビジネスコンテスト「優秀賞」と、さまざまな分野で受賞を重ねてきた。代表取締役の水谷岳史さん(36)はどう受け止めているのか。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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