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「パワハラはダメ」と会社から口を酸っぱくして言われ、部下への指導で叱りにくい空気が漂っている。暴言や暴力などのパワハラ行為は論外だが、必要な「厳しさ」まで手放していいのか。意味のある厳しい指導を考えたい。AERA 2024年2月12日号より。

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 叱りにくくなることで、必要な「厳しさ」まで失われている。そんな懸念を抱くのは、ハラスメント対策のコンサルティング会社、クオレ・シー・キューブ取締役の稲尾和泉さん(56)。同社は「パワーハラスメント」という言葉を作った会社だ。

 稲尾さんは「上司が部下を日常的に叱り飛ばしたりするパワハラの『負の作用』に皆が気づき始めた。その点ではプラスの価値も大きい」とする一方で、

「『厳しい指導=パワハラ』ではありません。100かゼロか、のように厳しくできなくなっている現状は心配。組織において厳しく指導すべき場面でそれがなされないと、パワハラが増えるという研究結果もあるんです」

 上司が何も叱ってくれないことで、部下の中で勝手にリーダーシップをとってやりたい放題やってしまう人が出てきたり、部下同士のトラブルに発展し、パワハラが生まれたり。厳しい指導という形で関わらない方が、リスクは高いというのだ。

「組織が組織として機能するためには、誰かがきちんと権限を持って責任を取りながら、指示や命令を通す。その『力関係』は生かさないと組織でやってる意味がない。そこは維持しながら、ハラスメントはどう防ぐのか、ということだと思います」

最初から叱るのが鉄則

 叱れないリスクの一方で、そこを指摘することは「勘違い」を招きがちだとくぎをさす。

「『やってもいいパワハラと、だめなパワハラがある』などと言う人が出てくるんです。人格攻撃や人権侵害であるハラスメントは当然、すべてダメ。それと問題行動の改善や本人の成長を促す厳しい指導を、区別した上で叱ることが大切です」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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