安全調査委員会の役割は、調査すべき事故の選定から調査方法、そして調査結果の考察などです。委員長の私にはそれ以外に、対外的な情報発信の仕事がありました。定期的に行われる記者会見で、事故調査の結果などを発表する役割です。またテレビカメラが入って行われる公式な記者会見の後も、時間をつくってその場に残って丁寧に取材をしてくれる記者さんたちに安全調査委員会の調査のあり方を丁寧に説明したり、質問に応じたりしていました。
この会見とその後の質疑応答などの内容は当然、新聞やテレビなどで報道されます。私の発言は会見後の個別の取材のときのものを含めて、各メディアの判断で部分的に切り取られたり、要約されたりしながら使われました。それは当たり前のことで、どんな形であろうと世の中に広く注意喚起できればいいと考えていました。しかし、そのことで知人から面と向かってお叱りを受けるとは思いもよりませんでした。
お叱りを受けたのは、毛染めによる皮膚障害、要するに白髪染めのトラブルに関する会見を行ったときの報道に関してです。いわゆる白髪染めは、皮膚に障害を発生させる危険性が高く、実際に多くの製品でトラブルが発生していました。もともと危険なものであることを知りながら、それよりも「きれいに見られたい」「若く見られたい」というのを優先して多くの人が使っているのが現実です。記事の中での私の具体的な発言は覚えていませんが、どうもそのことに触れたのがまずかったようで、合唱仲間たちと練習後の打ち上げでお店に入って談笑しているときに、ある女性から「あなたは女性全員を敵に回している」「発言には気をつけたほうがいい」と笑いながら注意されました。