この場合の「ふーん、だよね」の意味をあらためて自分なりに考えてみると、新たに出会った知識や概念などに対する「はじめまして」の挨拶のようなものだと思いました。それまで自分の頭の中にないものが初めて頭の中に入ってくるとき、どんなふうに応対をすればよいかわからず困ります。ストレートに「いらっしゃいませ」とか「お初にお目にかかります」というのもおかしいので、受け入れる最初の印として「ふーん」を使っていたのです。

 こういうとき、以前なら「そんなこともあるんだね」と、もっとはっきりとした物言いをしていたでしょう。曖昧な表現には、攻撃性や厳しい批判などのトゲトゲしいものをオブラートに包んで和らげる効果があるので、いつの間にか「ふーん」を使うようになっていたのかもしれません。

 私の分析を事務所のスタッフに話したところ、話をしていてピンとこないときにも「ふーん」を使っていると指摘されました。理解できない話や意見などに対しても、「よくわからない」とはっきり言わず、「ふーん」で返していたので、どうやら状況に応じて「ふーん」の使い分けをしていたようです。白黒はっきりさせるべきときに使うとおかしな感じがしますが、そうする必要のないコミュニケーションでは、波風を立てないためにこういうものを使うのは案外大事なのかもしれません。

 ただし、使う場合は、それなりに場の雰囲気を読んだり、相手の反応を見極めることが必要です。空気を読まずに曖昧なことばかり言っていると、まわりを不快にさせたり、場合によっては認知症の疑いをかけられかねません。本当に気をつけなければいけないことばかりで面倒です。

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