高齢化社会となり、老化のよるトラブルも顕著になる日本。そのうちの一つが、「老害」だ。失敗学の提唱者・畑村洋太郎氏は女性の知人から「女の敵」と言われたそう。その理由を畑村氏の新著『老いの失敗学 80歳からの人生をそれなりに楽しむ』(朝日新書)から、一部を抜粋・改編して紹介する。
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女の敵といわれた
コミュニケーションでは、相手がどう受け取るかまでちゃんと考えないとトラブルになることがあります。加齢はコミュニケーション力を低下させるので、老いると配慮不足からトラブルにつながるケースが自ずと増えてきます。とくに注意が必要です。
私も思ったことをそのまま口にして、知人から注意されたことがありました。消費者庁の消費者安全調査委員会の委員長をしていたときのことです。なるほど「口は災いの元」というのは本当だとわかり、あらためて気をつけなければいけないと思いました。
消費者庁は内閣府の外局で、消費者に関する行政や消費生活に密接に関連する物資の品質表示に関する事務を行っています。二〇〇九年に設置された比較的新しい組織で、私は三年後の二〇一二年に発足した、消費者に関わる広範な種類の事故の調査に取り組むことを役割とする消費者安全調査委員会の初代委員長を務めました。私が長年提言してきた、刑事責任の追及ではなく、事故の再発防止につながる調査を目的としている珍しい組織で、「消費者事故調」と呼ばれることもあります。