NHKのウェブテキスト展開。海老沢勝二元会長が<「総理番」先輩記者が語る>という政治マガジンに登場したり(2018年7月11日付け記事で今でも見られる)と、スタート直後は、放送コンテンツとまったく関係のない、中身もあった。現在は放送とかならず紐付けされるようになっている(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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NHK NEWS WEB」がなくなるかもしれない。

 自民党の情報通信戦略調査会も、総務省の有識者会議も、討議のうえでの結論はほぼ同じで、NHKのネット業務を必須化するかわりに、テキスト情報については、いったん廃止もしくは、現在「理解増進情報」として出しているネット情報を、放送と同じものにするべきだという答申を出している。

 つまり、NHKプラスのように「番組」を流すのはいいが、関連情報として各地の放送局がだしたニュースの深掘りや、週刊誌の中吊りを模した入口の「政治マガジン」、取材プロセスをさらす「事件記者取材note」等々のテキスト情報は駄目ということになりそうなのだ。

 日本新聞協会が民業圧迫だということで、NHKのテキストでのウェブ展開の拡大について常々反対の声明を出していたことから、ネット上では「新聞協会の横暴」という声があふれ、ほぼすべての識者が、そもそもこのウェブに人々の生活の主軸がうつった時代に、「NHK NEWS WEB」を廃止にするなどありえない、という意見を表明している。

「絶対にNHK NEWS WEBはなくしちゃいけないと思いますね。新聞各紙もいろいろ言いたいことはあるだろうけど、そこは認めていいんじゃないの」(津田大介さんの1月6日のツイート)。

 でも、私はことはそう単純ではないと思っているんですね。

公的な資金による巨大な無料メディア

 私が慶應や上智で後に『2050年のメディア』という本にまとまる新聞の地殻変動に関する調査を始めた2018年には、新聞の総部数はそれでも、4200万部強あった(2017年実績)。それが、発表された最新の2023年の数字では2859万部になっている。

 約1340万の部数が失われたことになるが、それ以前の6年間では、減ってはいたとはいえ、その減り幅は約622万部だった。2018年の日本マス・コミュニケーション学会で、「紙の部数は下げ止まる」と言った新聞業界出身の教授がいたが、下げ止まるどころか、加速度をつけて減っている。

 今後をみても、そもそも人口がわずか10年後には、今の2割減となる都道府県が青森、岩手、秋田、高知、長崎などめじろおしだ(国立社会保障・人口問題研究所)。

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