紙の部数が減っていくとなれば、デジタルの有料版を成功させるしかない、ということは常々このコラムで言ってきたことだ。その理由はヤフーなどのプラットフォーマーからの配信料収入は極端に低く、到底紙の落ち込みをカバーできるものではないからだ。

 そこで各地方紙はここ数年で次々に電子有料版を始めているが、十勝毎日新聞などの例外をのぞきその契約者数は1000に届いていないところも多い。

「NHK NEWS WEB」はNHKのネットワーク報道部という部署が運営しているが、この部署はもともと、新聞社でいう地方部、社会部の地方の放送局の記者たちをたばねる「ネットワーク」というセクションと、新聞のデジタル編集部にあたるネット報道部が合併して2017年にできた部だ。だから、「NHK NEWS WEB」では各都道府県別のタグがあり、そのタグをクリックすると、速報のみならず、各都道府県別の「深掘り」と題した特集記事が読めるようになっている。

 こんなものを無料で出されたら、新聞としてはたまらん、ということなのである。

共同通信・地方紙の奮起も望む

 NHKの年間の受信料による事業収入は、2023年度で6440億円だ。新聞社で最大の売り上げを誇る読売新聞ですら、巨人軍を含む基幹7社の売り上げ総額で2720億円だから、いかにその規模が大きいかわかるだろう。しかも、受信料は放送法によってテレビ受信機を所有するものは支払うことが義務づけられている。

 放送法では民放とNHKの二元体制を維持発展させることが重要とされているが、インターネットという新しい伝送路が生まれたことによって、二元ではない、テキストメディアを含めた「多元性」の維持が今問われていると考えたほうがよい。

「長期的にみると全国紙で残るのは日経と一般紙一紙」

 ということを、私は2019年暮れの新聞労連での講演で言ったが、地方紙を含めてメディアは多元的であるほうが社会にとっていいことは言うまでもない。

 この問題については、このコラムがまだサンデー毎日に連載されていた2020年7月に「地方メディア支援で『新しい公共』実現を NHKへの提言」というタイトルでこんなことを書いている。

〈NHKは「新しい公共」をめざすべきだ。
 たとえば、7000億円を超える受信料収入が毎年あるのだから、毎年100億円を、地方のメディアに付与してはどうだろう〉

 実は、2023年10月に発表されたNHKの経営計画案(24~26年度)の中に、3年前の私の提案をそっくりとりいれたような、計画案がある。

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