元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 この冬最大の収穫。それは……ついにたくあん作りに成功したこと!

 作ったことがないと一体どこからあの歯応えと独特の風味が生まれるのかと不思議になるわけですが、作り方は超簡単。米糠と塩を混ぜたサラサラの床に干した大根をギュウギュウ詰め、おもりを置き放置するだけ。米糠も塩も安いし、冬は立派な大根が一本150円とかで売られておるので物価高も無縁です。

 だがシンプルなものほど思いがけぬ落とし穴があるわけで。数年前に初挑戦した時は、それらしきものはできたが歯応えグニョグニョ。敗因は多分おもりが軽かったせい。圧が足りないので大根の水分が染み出すのに時間がかかり、その間に余計な菌が増殖したのではないかと。

 確かにどのレシピを見ても「おもりは大根の重量の2倍以上」などと書いてある。でもせっかくつけるなら5キロとか漬けたい。ってことは10キロのおもりが必須? そんなものどこにもないっす。ペットボトルに水を入れる手もあるがそもそもペットボトル買わないし、漬物用のおもりも売ってはいるが、やっぱ漬物と言えば漬物石でしょ! 自然のもので間に合うのを買うのは敗北感あり。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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