かつて結局、挫折したとはいえ、新自由クラブの結成のような時代の変化に相応しい都市型の保守を目指す動きが党内からありましたが、現状ではそうした動きすらみられません。脱党し、新党を形成することで、今の野党の中で信頼のできる政党と新たな中道右派なり、中道左派なりの勢力を結集する動きがあれば、有権者の多くが注目するはずです。そういう動きこそが日本の政治、政党政治をよりダイナミックにしていくのです。

 そうした活力すらないとすると、結局、党内翼賛の果てに、より集権的な巨大政党が政府を仕切る、極めて上意下達の統治構造になりかねません。政界再編のエネルギーが出て、それを通じてより広範で多様な民意を掬い上げる政党政治に変わってほしいと思います。

 今回のことで明らかになったのは、自民党という政党が活力をなくしているということです。自民党に活力があった時は、派閥の弊害よりも政治のダイナミズムがより際立っていました。今はそれすら枯渇しつつあります。そこに、自民党という巨大政党の宿痾があるようです。

AERA 2024年2月5日号

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