AERA 2024年2月5日号より

「働き方改革」のしわ寄せは、下請けやフリーランスに

 背景に何があるのか。

「過労死弁護団全国連絡会議」幹事長の玉木一成弁護士は、「長時間労働とパワハラの問題がある」と指摘する。

「多くの職場で、人手不足となり労働者が足りなくなっているにもかかわらず仕事の量や内容は変わっていません。そのため特に中小企業は、法律ができても対策を取る余裕がなく、労働時間の上限規制が守られず長時間労働になるところが非常に多くなっています」

 一方、それでも労働時間を減らさなければいけない状況下で、管理職が追い込まれ余裕がなくなっているという。

「その余裕のなさがストレスになり、部下へのパワハラの原因になり、その結果、追い詰められ精神を病む人が増えています。そして今は口頭で怒鳴られたりするだけでなく、上司からの連絡がメールやLINEで来ます。文字だと何度も見たりするので、精神的に追い詰められていきます。今の労働現場は、パワハラによって精神を病みやすい状況にあります」(玉木弁護士)

 労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」代表の今野晴貴さんは、「働き方改革は大企業で行われているだけだ」と評する。

「大企業が労働時間を減らす分、下請けにしわ寄せがきます。下請けの労働時間は長くなり、その結果、過労死だけでなく精神障害も増えています。また、いま政府は雇用によらない働き方を促進しフリーランスら個人事業主を増やしていますが、フリーランスにも無理な命令が下っています。つまり働き方改革というのは、大企業の周辺を犠牲にしながら行われています」

 一方で大企業も、残業時間の上限規制に対し「残業を隠している会社は少なくない」と今野さんは見ている。

「家に仕事を持ち帰るのもその一つ。持ち帰り残業の場合、労働時間と認められるケースは少なく、見せかけの労働時間は減ります。さらに過労死の際は持ち帰り残業は労災認定するための労働時間として認められにくく、自己責任扱いにされてしまうこともあります。こうした隠れた長時間労働も、過労死を促進していると考えられます」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年2月5日号より抜粋

AERA 2024年2月5日号より
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