「原作に近づけたい」本人の希望で、専門のトレーナーを付けて肉体改造。これがまさに「恵体」(恵まれた体)と言うべき見事な仕上がりなのだ。
もちろん演技も初めてで、セリフも訥々(とつとつ)とした語り口。しかし、むしろそこが「野生のフードファイター発見!」的ワクワク感あり。ちょっと白鵬に似てるし。
お米4合、卵8コ分(!)のメガオムライスがもりもり春日さんの胃袋に吸い込まれていく。その光景に至福の表情を浮かべる野本さん。
これは受容の物語だ。野本さんの「作りたい」欲を春日さんが全部受け止め、それは彼女の「食べたい」欲を心ゆくまで満たすことになる。
初めはキッチンと食卓で分かれていたポジションも、いつしか二人でコンロ前に立つようになり、そして野本さんは気づく。春日さんへの自分の恋心を……と、二人の関係も徐々に進んでいく。
作る人、食べる人。それは女でも、男でもいい。猫だって犬だって、孤独に脳内食レポを繰り広げる井之頭五郎だって、ただ皿に向き合い一心に飯を食らう。その姿こそ「幸福」のカタチなのだ。
※週刊朝日 2022年12月30日号