宮内庁書陵部所蔵の古典籍である「むし双六(すご・ろく)の和歌」を鑑賞する天皇、皇后両陛下の長女愛子さま=23年11月24日、皇居内の同庁書陵部庁舎、宮内庁提供

 しかし、「平和」という言葉を選んだとしても、題材は2016年5月のことを綴った愛子さまの作文で、ずいぶん前のものを引っ張り出してきた感じがした。当時の愛子さまの作文全文を改めて読んでみると、雅子さまがこの御歌を詠んだ思いがさらに伝わってくる。

 愛子さまの作文に「すごくよく書けていると思います。まさに心に響く作文です」とは、これまでに3000人以上の作文の指導をしてきた「あおぞら作文教室」塾長の眞野玲子氏。

愛子さまの作文は「空」から始まる

 愛子さまの作文は「日常」から入る。冒頭はこんな感じだ。

【卒業をひかえた冬の朝、急ぎ足で学校の門をくぐり、ふと空を見上げた。雲一つない澄み渡った空がそこにあった。家族に見守られ、毎日学校で学べること、友達が待っていてくれること…なんて幸せなのだろう。なんて平和なのだろう。青い空を見て、そんなことを心の中でつぶやいた。このように私の意識が大きく変わったのは、中三の五月に修学旅行で広島を訪れてからである。】

 この冒頭に眞野氏は、こう話す。

「空という情景から入って、後半で【何気なく見た青い空。しかし、空が青いのは当たり前ではない。】と綴り、また、空に戻しています。相当な筆力があり、このまま雑誌などに掲載してもおかしくない作文ですね。

 心に響く作文の特徴としてあげられるのは、具体的な話がしっかり入っていること。愛子さまのこの作文には、自分自身に関する具体的な話がしっかり入っています。また、広島に実際に訪問されて感じたことを書かれていてルポルタージュな要素もあります。

 私たちのような者からの添削指導のアドバイスがあって、結果、こういう作品に仕上がったというレベルの作文です」

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ
平和・戦争、過去・現在と対比が