プロもうなる作文だ。その他、随所に「うまいな」と思うところが詰まっているという。

「私は文章の中に“対比”を入れるようによく指導しています。愛子さまのこの作文には、“平和・戦争”、“過去・現在”、“日本・アメリカ”などが盛り込まれています。

また、【オバマ大統領も広島を訪問され、「共に、平和を広め、核兵器のない世界を追求する勇気を持とう」と説いた。】と綴り、オバマ大統領の話も入れていますが、自分の私的な感情だけで話をまとめていない」

 作文の技巧的なところをあげたらきりがないが、ただの感想文になっていないところから、愛子さまの「平和を願う」思いが強く心に響いてくる。

「広島の原爆ドームや平和記念公園に行って、感想文を書くというのはよくあることかと思います。子どもの感想は、“悲しいことだと思った”“かわいそうだと思った”“私だったら耐えられないと思った”など、“~思った”になりがちなんですね。愛子さまの作文はそれを超越しています。

 天皇陛下はもちろん、雅子さまも優秀な方ですので、愛子さまも本をたくさん読まれたり、論理的な思考を積み重ねていくような育ち方をされたのではないでしょうか」

 愛子さまは、平和への思いをこう綴っている。

【平和を願わない人はいない。だから、私たちは度々「平和」「平和」と口に出して言う。しかし、世界の平和の実現は容易ではない。今でも世界の各地で紛争に苦しむ人々が大勢いる。では、どうやって平和を実現したらよいだろうか。】

 2016年の作文だが、いま読んでも日本の、そして世界の平和を考えさせられる。今年の2月24日で2年となるロシアによるウクライナへの軍事侵攻、昨年10月に勃発したイスラエル軍とパレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘――いまも多数の民間人に犠牲者が出ており、戦禍が広がり、その終わりは見えない。

 愛子さまは平和への願いを、自分の言葉で力強く締めくくる。

【そして、唯一の被爆国に生まれた私たち日本人は、自分の目で見て、感じたことを世界に広く発信していく必要があると思う。「平和」は、人任せにするのではなく、一人ひとりの思いや責任ある行動で築きあげていくものだから。】

 愛子さまの平和への願いの作文を受けて、雅子さまが詠んだ御歌が、さらに深く心にしみる。愛子さまは、大学卒業後、日本赤十字社に内定しているが、日赤でも「平和」を胸にご活躍が期待される。(AERA dot.編集部・太田裕子)

愛子さまが学習院女子中等科の卒業文集に寄せた作文(※全文を画像にしたものです)
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