世界水泳選手権2023福岡の競泳・女子200m個人メドレー決勝でレースを終え、観客に手を振る大橋悠依=2023年7月24日、マリンメッセ福岡

――決勝は大混戦でした。先行する3コースのウォルシュ選手(米)を最後に抜いて、0秒13差の2分8秒52で勝利しました。

大橋 200m決勝は400mとメンバーががらりと変わって、私以外はメダルを取っていませんでした。招集所ではほかの選手の様子を見る余裕があって、平井先生に「みんな緊張していますね」と話したのを覚えています。決勝は150mで5人ぐらい並ぶ展開を予想していました。会場入りしてから最後のスパートの練習を入れていたので、ラスト15mは「行け! ここだー!」という感じでしたね。余裕があった分、最後の伸びにつながったように思います。

――競泳の日本女子で五輪2冠は初めてです。

大橋 大会前は五輪であんな結果が出せるとは、まったく思っていませんでした。直前まで長野県東御市で高地合宿をしたのですが、ぜんぜん調子が上がらない。体の状態も良くなくて気持ちも落ち込んでいたので、平井先生に「東京に帰って理学療法士の先生に診てもらいたい」と相談しました。400mが悪過ぎたので200mに絞ることも考えていると伝えたら、平井先生から「そんな中途半端な状況じゃないよ。やるか辞退するか一晩考えろ」と言われて。五輪のレースまで残り20日ぐらい。平井先生をすごく困らせたと思います。

――よく立て直した。

大橋 五輪でメダルを取らないと、この5年ぐらいの努力が報われないと思ったのと、家族、友人、好きだった中学や高校の先生、応援してくださる方に見てもらいたい、という思いもありました。翌日、平井先生に「メダルが取りたい。それができるかできないかわからないけれど、最後までやりきるからサポートしてほしい」と話しました。そこから2、3週間は、頑張るというより、泳ぎを守って守って、自分の感覚とのすり合わせを最優先にやりました。選手村に入るタイミングで理学療法士の先生に体を診てもらって、会場の東京アクアティクスセンターのプールに入水したら感触がよくて、「もしかしたら力を出し切ることができるかもしれない」と思いました。多くの方の支えがあって、最高の結果が出せました。

世界水泳選手権2023福岡の競泳・女子200m個人メドレー決勝で泳ぐ大橋悠依=2023年7月24日、マリンメッセ福岡

――五輪後、平井コーチの元を離れて、イトマン東進で石松正孝コーチの指導を受けています。

大橋 五輪の200m個人メドレーが最後のレースという感じではなかったんです。もう少し泳ぎたいという気持ちがあって、現役続行の選択をしました。2017年に出した200m個人メドレーの自己ベスト(2分7秒91)更新が目標です。記録への挑戦は競泳の醍醐味(だいごみ)ですから。練習を積み重ねて、年齢にあらがうことができれば、チャンスはあると思っています。

(聞き手:スポーツライター 堀井正明)

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