東京五輪・競泳女子200メートル個人メドレー決勝で優勝し喜ぶ大橋悠依=2021年7月28日、東京アクアティクスセンター

――予選トップは米国のワイアント選手で4分33秒55。35秒台に5人がひしめく混戦でした。決勝のレースプランはどうだったのですか。

大橋 平井先生の指示は「敵はワイアントのみ」。ワイアントは最後の自由形が強いので、「自由形に代わる300mまでに1、2秒差、できれば2秒ほしい」という話でした。私も展開をしっかり考えるタイプなので、平井先生と考えが一致するときは、やっぱり安心します。「なるほど、向こうがそう来るなら、こっちは」と考えられます。「気合で行け」という精神論ではなくて、ちゃんと戦力分析をしてくれるので、すごく助かります。

――決勝は作戦通り300mの折り返しで1秒99差。ワイアント選手に0秒67差の4分32秒08で逃げ切りました。

大橋 直前に男子400m個人メドレーの決勝があって、予選から記録があまり上がっていなかった。平井先生も「上がっていなかったな」と話していました。女子もダメージが残っている選手が多ければ、予選で力を温存した自分にチャンスがあるな、と思いました。
 決勝は朝だったので、前半から飛ばすと最後に響くことは、これまでの経験でよく分かっていました。決勝だから前半から上げるなんて考えないで、200mまではペースを守りました。大事な3種目の平泳ぎは調子が良くて、足に水がかかっていたのでリードすることができました。ポイントは自由形の300mから350mです。苦しいところですが、ここを飛ばすのは2016年くらいからずっと平井先生に言われていました。平泳ぎの後半は先生の顔が浮かんで、「次、飛ばさないと飛ばさないと」と心の準備をして、自由形はとにかく飛ばしました。

――会心のレースでした。翌日から女子200m個人メドレーが始まります。予選、準決勝、決勝と3日間にわたってレースが続きました。

大橋 一つ勝って、すごく気が楽になりました。200mは決勝まで力をためてためてとだけ考えました。「ため人間」になろう、と。準決勝は全体の5位。決勝は2コースになって、運がいいなと思いました。プールを前にして右側のコースが好きなんです。昔からジュニアの全国大会で優勝したり、いい記録が出たりするときは、2コースとか3コースが多くて。

次のページ
記録への挑戦は競泳の醍醐味