長く続くと闇が出る
1988年にリクルート事件があった頃、10代の僕は、野次馬としてニュースを見ていました。政治改革が始まって、政治改革大綱ができて、派閥を解消することになりました。
でも、政治改革が、選挙制度改革になっていった気がするんですよね。討論番組で「中選挙区制から小選挙区制に変えないとダメだ」と熱弁をふるう人はいたし、選挙制度は変わったけど、それだけになっちゃった。それで、わかったのは、改革が進んだとしても、30年たてば忘れるってことです。うやむやになってしまうんです。
だから、有権者は「見てるぞ」とアピールを忘れちゃいけないと思う。投票ですよね。もちろん投票して終わりではなくて、投票した人がどういう言動をするのか、公約はどうなるかという見守りが、選挙の翌日から始まります。政治家を育てていかなくちゃいけない。「この人はちょっと違うな」と思ったら、次は違う人に投票すればいい。投票って、過去の自分との答え合わせだと思うんです。4年前の自分はこう考えたけど、今は違うなとか。日記帳代わりに、投票所に行ったらどうですか。
2000年にロシアではプーチンが大統領になって今も続いていますが、よく考えたら森(喜朗)さんが総理大臣になったのもその年なんです。森さんは1年で辞めたけれど、その後は小泉(純一郎)さん、安倍(晋三)さんと、森さんの影響力のある清和会(清和政策研究会、安倍派)の総理が続いていたわけです。森さんは政治家を引退した後も、東京五輪組織委員会の会長を務めたし、安倍派5人衆の重用を主導したと言われています。選挙の洗礼を受けないまま影響力を保っていることに、ぞっとします。ロシアを笑えないなと思いました。
22年の安倍派のパーティーで、森さんが派閥の人数について「あと何人で100人になるぞ、なんてやってたときが一番危ない」とスピーチしていたんです。安倍晋太郎さんが亡くなった後、跡目争いで分裂したのを、森さんは知ってるんですよ。長く続くと、闇が出て、それが終わるのは歴史の必然なのでしょうが、勝手にこけるのを、国民は待つだけなのでしょうか。どうしたら緊張感のある状況を作れるのか考えたいと思います。
(構成/編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年1月29日号