現実には、8年弱の長期政権の下で、再び与党病の体質と構造が定着し、蔓延する。実質的に最大派閥の清和会に支えられた安倍政権は、蘇生した派閥政治には無関心で無策だった。
20年9月の安倍首相退陣後、自民党初の無派閥首相として菅氏が浮上した。とはいえ、1年後の総裁選で、派閥の支援がなかった菅首相は党内で孤立する。不人気も重なって、最終的に続投断念に追い込まれた。
無派閥首相の短期沈没の後、28年ぶりに「強烈な派閥意識」の宏池会首相が復活した。そこで自民党政権を根底から揺るがせる「派閥とカネ」の問題が噴き出したのは、偶然の巡り合わせとは思えない。
多くの国民は「票は旧統一教会頼み」「カネはパーティー収入による裏金頼み」という自民党の惨状を今、実感している。
24年、1月下旬予定の通常国会開会を前に、東京地検特捜部による捜査が山場を迎える。政権の行方も捜査の展開次第という空気だが、自民党は疑惑噴出時の定番モデルの「政治刷新本部」を今度も立ち上げた。
出直しのカギは、「派閥」の解消か「カネ」の全面公開か、あるいは両方の同時実現しかないが、「本物の派閥の終わり」に踏み出せるかどうか。岸田首相は19日、岸田派(宏池政策研究会)解散を明言した。今回もお定まりのその場しのぎに終われば、いずれ結党後3度目の野党転落という民意の鉄槌が下る日が訪れても不思議ではない。(ノンフィクション作家・塩田潮)
※AERA 2024年1月29日号