元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
【写真】近所の喫茶店に行ったら、正月のモチがあるからと出して下さったモチがこちら
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年明けは恒例の父宅での2人正月。今年で最後という年賀状を見たら87歳とあり、実は父の年齢を正確に認識していなかったのでちょっと驚いた。母が亡くなって7年、心身の調子に波あれど、そこそこ元気に一人暮らしを続けている父は立派と今更ながら。
特にすごいと思うのは、家の中をきちんと片付けていることだ。昭和初期の躾が身についているのだろう。改めて見ていると、背を丸めて洗濯物をきっちり畳み、ゴミも丁寧に分別するゆっくりだが丁寧な仕事ぶりは私よりずっと板に付いていて、お父さん頑張って生きてるなあと急に胸が熱くなった。3度の食事を考えることは慣れないらしいが、それでもスーパーの惣菜を買いに行く好奇心を保っているのもすごいと思う。
そんな父ではありますが、もちろん親子とは難しいもので、正直言えば私は父と話すのが少し苦手だ。なんというか「一言多い」! 明るい人だし口調も柔らかいが、何かにつけて一言挟まずにいられないらしく、私の仕事にもちょいちょい批評を挟んでくる。お世話になっている人への手紙も、あそこをこうしたらもっとよかったと「助言」つき。高度成長期の出世競争の中を生き抜いた後遺症なのだろうか。評価することが好きなんですよね。本人悪気は全くないんだが、なんというか……上司目線!