寺田寅彦は関東大震災の11年後に書いた「天災と国防」という論文で、「日本は根本的な脆弱性を持った国」と記し、「文明が進むほど社会は脆弱になる」と言っています。つまり、自然の脆弱さと人間が作り出した脆弱さが相乗化され、日本は世界で一番、リスクの高い国になっているのです。そう考えれば、国防は外の敵の問題だけではないはずです。寺田は、こうも言っています。「戦争は人間の努力次第で避けられる。しかし、震災は避けられない」と。防衛費2%ありきの話が出たのは、台湾有事が避けられないという前提で世論が作られ進んできたからです。国策のあり方のつけが回るのは、結局は国民です。助けられた命が助けられないなんてことがあってはなりません。

 国家の大計として地震が起きても、それに対処できるインフラ、避難所、備蓄、レスキュー部隊を作るべきです。巨大な救助ヘリがあれば、道路が寸断されてもすぐに駆けつけられたはずです。法外な額のトマホークを買うくらいなら、救助ヘリを作るべきです。天災への国策的な取り組みなしに組み立てられた防衛政策は砂上の楼閣を築くようなものではないでしょうか。

AERA 2024年1月22日号

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