政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。
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新年の初っ端に日本列島を震撼させた能登半島地震。今は被災地にどう対応していったらいいのか、差し迫った問題で手一杯なはずです。ただ、この間、痛感したことは、自然災害に対する国策が防衛政策と比べると圧倒的に貧困だということではないでしょうか。世界に占める日本の国土面積は0.25%にすぎないのに、全世界のマグニチュード6.0以上の地震の18.5%が日本で起き、活火山の数も7%を上回っていると言われています。にもかかわらず、その「気象学的・地球物理学的」な脆弱性に目を向け、防災や減災、国民生活の安全・安定を図るとともに、過疎地域に目配りした対策をとってきたとは言えません。
昭和の終わりと冷戦崩壊が重なった1990年代以降、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など各地で大地震が起き、日本列島は活動期に入っています。地震学者の中には、広域的にプレートが移動する南海トラフの前の地域地震ではないかと予測する人もいます。