不妊や卵巣がんのリスクを高めることも
子宮内膜症は、不妊の原因のひとつになります。卵巣や卵管で増殖した子宮内膜組織がまわりの臓器とくっついてしまう「癒着」が起こると、排卵しにくくなる、卵管が詰まって卵子や精子、受精卵が通れなくなる、着床しにくくなる、ということが起こり、不妊になると考えられます。不妊症の人の約3割は子宮内膜症というデータもあります。
また、子宮内膜症は将来、卵巣がんになるリスクを高めることがわかっています。頻度は0.74%とそれほど高くはありませんが、40歳以上で6㎝以上のチョコレート嚢胞がある人は注意が必要です。
「子宮内膜症は再発しやすいため、薬などの治療で一度は治っても、その後再発してがん化する人もいます。『閉経したから安心』ではなく、閉経以降も経過観察が必要です」
治療薬は進歩し、種類も増えている
子宮内膜症の治療も薬物療法と手術があり、月経痛に対してはまず鎮痛剤を使用します。それで改善しないときは、低用量ピルや黄体ホルモン製剤、GnRHアナログ製剤、子宮内黄体ホルモン放出システムなどの使用を検討します。
大きなチョコレート嚢胞で破裂のリスクがある人や、悪性の可能性がある人、薬物療法をしても症状が改善せず生活や妊娠に支障をきたしている人などは手術を検討します。
手術には、病巣部分だけを切除する方法と、子宮や卵巣、卵管も含めて切除する方法があります。腹腔鏡手術が増えていますが、悪性の可能性がある場合はおなかの中でがんが飛び散るのを防ぐため、開腹手術でおこないます。
子宮内膜症や、一部の子宮筋腫では、月経痛や過多月経などの症状でつらい思いをする女性がたくさんいます。でも「みんなそうだから」「仕方ないことだから」と我慢して婦人科を受診していない人もまた多いのが現状です。例えば、月経痛がつらくて市販の鎮痛剤を何度も飲まなければ耐えられない。出血量が多くて何度もナプキンを交換しなければならず、いつもトイレに行くタイミングを考えている。そのような症状があったら、それは仕方ないことでも耐えるべきことでもなく、すぐに婦人科に行くべき事態と考えましょう。