抗議デモを撮影中、乗用車から軍人と思われる私服の男性2人が降りてきて、ライフルを突きつけられたという

 2022年、映像作家の久保田徹さん(27)は111日間、ミャンマーの収容施設で拘束された。解放されて日本に帰国してから1年あまりが経過した。捕まったときのこと、刑務所の様子、そして現在、取り組んでいることなどを聞いた。

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 久保田さんは22年7月30日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで国軍への抗議デモを撮影中、軍によって拘束された。乗用車から軍人と思われる私服の男性2人が降りてきて、ライフルを突きつけられた。

 久保田さんはその後、扇動罪など3つの罪で計10年の禁錮刑が言い渡された。

「ミャンマーはいま、表現の自由がない状況です。SNSに国軍の批判を書いただけで、拘束されることもあります。ライフルを突きつけられたときは、『あ、まずいな』と感じました」

 久保田さんは14年に慶應義塾大学法学部に入学。大学1年生のとき、群馬県館林市でミャンマーから国外へ逃れてきた少数派イスラム教徒ロヒンギャの人たちと出会った。そこからミャンマーとの接点が増えていく。

 これまでも数多くミャンマーを訪れ、収容されているロヒンギャの様子などの映像作品を撮り続け、Yahoo!ニュースなど多くのサイトで公開してきた。

 そんなある日、ミャンマーで”異変”が起こる。

 21年2月、ミャンマー国内でクーデターが起きた。現在も国軍が実権を握っており、2年以上の月日が経過している。国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏も、クーデターが起きた日以降ずっと拘束されたままだ。

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