(撮影/戸嶋日菜乃)
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 徐々に増えている女性管理職の割合だが、まだまだ大多数が男性。そんな中、AERAでは11年ぶりに「女性管理職100人アンケート」を実施。アンケートや現場の声、専門家の意見から、女性管理職の働きやすい環境を考える。AERA 2024年1月15日号より。

【図表】女性管理職の両立が特に難しい理由がこちら

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 どうすれば、女性がより働きやすくなるのか。アンケートでは、女性管理職の「数」がまず必要だとする意見が目立った。

 家事代行のマッチングサイトを運営する「タスカジ」(東京都港区)は、和田幸子社長を含めて管理職の8割が女性だ。同社でマーケティング・コミュニティマネージャーを務める袴田里美さん(43)はかつて、管理職の9割が男性という企業で10年間働いていた。女性社員が自らキャリアを伸ばすという風潮が育ちにくく、「このままだと塩漬けになってしまう」と転職を決意したという。

「最初は形だけでも女性管理職の数が増えることによって、私にもできるのではないか、という意識が育ち、全体の雰囲気も変わると思います」(袴田さん)

 確かに、男性の管理職を見渡せば、非常に優秀な人から個性のある人、子育てに比重を置いている人までバラエティー豊か。女性管理職も数が増えることによって、いろいろなロールモデルが「見える化」されるだろう。

 データ活用コンサルティング会社、ギックス(東京都港区)の管理本部長、渡辺真理さん(41)は長年、人事に関わってきた経験から、こう話す。

「数合わせのために女性を優遇することは良いとは思わないけれど、管理職を打診すると、男性に比べて女性は、能力があっても『私には無理かも』と尻込みしがち。背中を押してあげて、自発的に挑戦させてみることは大切だと感じています」

AERA 2024年1月15日号より

企業体質を変えていく

『「家族の幸せ」の経済学』などの著書がある東京大学大学院の山口慎太郎教授(労働経済学)は、女性管理職が働きやすい環境のために重要なことについて、こう説明する。

「経営陣の意識改革が何より大切です。日本では長い間、24時間働き続けることができる人がリーダーになってきた。まずは、長時間労働に依存した企業体質を変えていく。ある程度強い外的圧力も必要でしょう。そうすれば、男性の意識が変わり、結果として、すべての人にとって良い職場環境になるはずです」

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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