AERA 2024年1月15日号より

 つまり男性の意識改革が欠かせないということだ。前出の女性管理職たちもみな、男性が作り上げた常識や慣習に直面し、悩んでいる。また、アンケートでは家庭の中で、家事・育児が女性側に偏っている現状も明らかになっている。

 最近、注目されているのは「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」という観点だ。組織の多数派である男性同士で作り上げてきた暗黙の了解や慣習、人間関係のことで、その多くが明文化されていない。

AERA 2024年1月15日号より

男性が変わらなければ

 このOBNについて男性自身が学ぶことで、組織を変えていこうと動きだしているのはデロイト トーマツ グループ(東京都千代田区)だ。22年、社内で「男性ネットワーク」と名付けた勉強会が始まった。パートナーの栗原健輔さん(41)が呼びかけ、メンバーは現在80人だ。栗原さんは、

「フルタイムで働く妻とは、高校時代に出会い、ずっと一緒に歩んできたのに、出産後にキャリアの上で差がついてしまうのは申し訳ないと感じていました。保育園のお迎えなどは分担していましたが、定時に仕事を切り上げる働き方を経験してみて、私自身もこれでキャリアアップしていけるのか、と考えたことがきっかけです」

 と話す。女性が活躍するためには、

「マジョリティーである男性が変わらなければと思った。OBNは意思決定を早めるためのあうんの呼吸でもあります。完全に否定するわけではなく、理解した上で互いを尊重する。それが本当の意味で組織の多様性につながる」(栗原さん)

 働き方改革、女性管理職の増員、男性の意識改革。加えて、女性管理職に特化した採用を始めている企業も増えている。女性にとって、追い風、チャンスであることは間違いない。

 11年前のAERAの「女性管理職100人のホンネ」の記事は、こう結ばれている。

「女性管理職たちが願うのは、自分たちが『特殊』ではなく『普通』の存在になることだ」

 2024年も、変わらぬテーマとなりそうだ。(編集部・古田真梨子)

AERA 2024年1月15日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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