能登半島沖を震源とする最大震度7の地震で甚大な被害が出ている石川県輪島市。同市の会社員男性(49)と妻は倒壊したアパートで生き埋めになり、地震発生から約2時間後に駆けつけた消防署員らに救助された。救助を待つ間X(旧Twitter)で救助要請のSOSを発信していた男性に話を聞いた。
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リビングのこたつで模型を作っていると、大きな揺れが起きた。新年早々の地震に驚いたが、能登地方では近年地震が頻発していたため、あまり気にしていなかった。
「揺れたけど大丈夫だよ」
男性が姉にLINEで連絡しようとした矢先、再び大きな揺れが襲った。とっさにこたつの下に潜り込み、妻も呼び寄せようと手を伸ばした。だが、ドシーンという音とともにあたりが真っ暗になった。最初の地震から、体感で15秒ほどの出来事だった。
「ここ数年、特に珠洲市のほうは激しく揺れています。『いずれ珠洲で大地震がくるのでは?』と思っていたのですが、こんなに広範囲だとは予想していませんでした。2007年の能登半島地震も経験していますが、その比ではない恐怖でした。度重なる地震で建物が脆くなっていたのもあるかもしれません」
男性は築20年ほどの2階建てアパートの1階に住んでいた。天井が落ちたのか、身動きが取れない。なんとか近くにあったスマホを手繰り寄せて119番に通報したが、つながらない。状況が飲み込めないなか、Xで救助要請の投稿をした。だが、電波が不安定なのかなかなか投稿できず、再送信を繰り返した。
その後は、
「助けてー、助けてー」
と何度も叫んだ。しばらく叫び続けると、「大丈夫かー!」とよく知った声が聞こえた。同じアパートに住む同僚が様子を見に来てくれたという。
助かったと思ったが、救助は難航した。その後同僚が呼びに行った消防署員によって救出されたときは、建物の倒壊から2時間10分が経っていた。
「救助までの時間感覚はなくて、途方もなく長く感じたとかはありません。でも、妻は痛みも激しく、苦痛だったと思います」