篠山紀信さん(撮影/写真部・長谷川唯)
篠山紀信さん(撮影/写真部・長谷川唯)
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 写真家篠山紀信さんが4日、亡くなった。83歳だった。人物、建築、美術など被写体のジャンルは多様で、作品の数々は世界で知られる。1978年から97年の約20年間、雑誌文化が盛り上がっていた時代の週刊朝日の表紙も撮り続けた。篠山さんを偲び、2016年6月13日の記事を再配信する。(年齢、肩書等は当時)

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 1970年代の“激写”シリーズ、80年代の「週刊朝日」女子大生表紙シリーズ、90年代の樋口可南子と宮沢りえの写真集発売……デビューから今にいたるまで、常に時代を切り開いてきた写真家、篠山紀信。

 アサヒカメラ7月号では写真集「Santa Fe」からの貴重なカットを披露。撮ってないものはない、といわれるほど多作だが、その中でもヌードは彼がいつも見つめてきた対象の一つだ。

 なぜ、ヌードを撮り続けるのか。その理由をたっぷりと語ってもらった。
 

原美術館を「当て撮り」

篠山紀信(以下=篠山):最初に聞きたいんですが、なぜ「アサヒカメラ」でヌード特集をやるんですか。

――「見たい」という読者がいるからです。

篠山:事前にもらった質問に、なぜいままでヌードを撮り続けてきたのか?というのがあるんですが、その答えも同じですよ。世の中の見たいって欲望があるかぎり僕は撮るんです。欲望の反映だから。僕は“反映写真家”。みんながヌードなんか興味ないよ、といったら撮らないでしょう、たぶん。

 だからあんまりヌードに興味はない――ないわけじゃないですね(笑)。ないわけじゃないんだけど、それは世の中を反映するために便利だから。社会の欲望を写真にするときにヌードはいいんですよ。だから東京という都市を撮るときにもヌードを置くんです。それで警察が来ることもあるけど(笑)。

――(笑)。秋には原美術館で展覧会が予定されていますね。こちらもヌードだとうかがっています。

篠山:すごくきれいな女性ばかりを30人そろえて撮り下ろしました。タイトルは「快楽の館」。性的な欲望を想像するかもしれないですが、考えてみると、写真家の快楽、僕の快楽ですね。ふだんはメディアの制約のなかで、お客さんの顔色をうかがいながら撮っているわけですが、今回は「自由に撮りなさい。でも全部あんたの責任だよ」と言われている。だから責任が重くて(笑)。

――美術館で撮影したそうですね。

篠山:最初は「アサヒカメラ」で昨年と今年の新年号で発表した「館」シリーズを展示しようかと思っていたんですよ。半分くらいは。でも、館っていったらここが館じゃないか。じゃあ、ここでやろう。やるならここで全部撮らないと面白くないと思いついて。だから全館新作です。

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