ここからの作業が、番組スタッフの「腕の見せ所」だとつげさんはいう。
「例えば那須塩原駅前などでは、車の通る音など様々な他の音が入ってきて、天皇ご一家の声はほとんど聞こえません。ここからが技術スタッフの腕の見せ所で、編集スタジオで両陛下の声だけグッと上げに上げて、かすかに聞こえる音声を拾い上げる作業を一生懸命しています。
やはり、天皇ご一家が普段どんな会話をされているか聞きたいですし、先ほどもお話ししたとおり、何気ない会話からこそお人柄が伝わります。涙ぐましい努力で、なんとか聞こえるときもあれば、全くダメということもあります。かすかな音を拾い、頑張って、多少でも聞こえるようになったときは、番組スタッフで大喜びします(笑)」
番組の舞台裏を明かしてくれたが、つげさんが携わった皇室番組では、皇族の方の「街歩き」ロケにも挑戦している。
「『皇室の窓』は2013年から始まっているのですが、皇室番組で初めて皇族の “街歩き”ロケを実現しました。三笠宮家の彬子さまが京都のお気に入りスポットを街歩きしながら案内するという番組を2017年に放送しました。皇室の街歩き番組はそれまで存在しなかったんですね。
皇族のロケですので、警備も皇宮警察と京都府警が集結しているなかで行われました。事前準備も入念でした。皇室番組の新たな歴史を刻むことができ、『いままでになかったことができた!』とスタッフ一同盛り上がりました。『長く続けていくとこういうこともあるのだ』とスタッフと話していました」
長年、皇室番組に携わるつげさんが、心がけていることがあるという。
「番組の監修は皇室解説者の山下晋司さんで、『皇室の窓』の放送開始時から全面的に関わっていただいています。山下さんからいつも言われているのは、『皇室を持ち上げ過ぎず、かたくなりすぎず、わかりやすく』ということ。何か表現に迷ったときは、山下さんの3つの要素がバランスよくできているかを考えています」
24年の年初も放送される、皇室番組。その舞台裏を知ってから視聴すれば、新しい発見があるに違いない。(AERA dot.編集部・太田裕子)