日銀が金利を引き上げるのは難しい状況だという

 インフレ率は容易には下がらないでしょう。人手不足に悩む企業は賃上げをせざるを得ないからです。一方で、名目金利も上がりにくい。住宅ローン金利への影響や多額の政府債務残高を考えると、日本銀行がマイナス金利を解除したとしても、引き上げ幅は限られるためです。

 もう一つ、循環的な要因として、日米の名目金利差の縮小は市場が見込むようには期待できないということがあります。

――24年は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ局面に入る一方、日銀は緩和策の修正が見込まれることなどから、金利差は縮まり、円高を予想する声も少なくありません。

 私はそうは思いません。市場は、FRBは24年に6回の利下げを実施すると見込んでいますが、実際には一度の利下げさえできない可能性もあると考えています。

金利を引き上げるのは難しい状況

 というのも、米国のインフレ率はなかなか抑えられないとみているためです。むしろ景気の過熱状態は長引くでしょう。新型コロナウイルス下で増えた余剰貯蓄は思った以上に多い。加えて、失業率は依然低い水準にとどまり、賃金上昇リスクはぬぐえない状況が続くと思います。

 日銀も、前述したように金利を引き上げるのは難しい状況にあります。さらに要注意なのは、格付け会社が日本国債を格下げするリスクです。

 23年は米国や中国の国債が格下げされました。日本は多額の政府債務残高を抱え、予算も膨らみ続けていますから、いつ格下げがあってもおかしくはありません。

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