怖いのは、国債が売られるリスクだけではありません。国債が格下げされれば、その国の金融機関の格付けも下がります。すると従来のようには外貨を調達できなくなります。日本の金融機関は不良債権問題に苦しんだ1990年代後半、「ジャパンプレミアム」と呼ばれる高い金利をつけないと海外市場から資金を調達できない状況に苦しみました。円の価値はそれだけ下がることになります。
――日本経済にとって、円安と円高はどちらがいいのでしょうか。
どちらが望ましいかは立場によって違います。一概には言えません。
経済全体としては、円安が進むほどプラスになると考えられます。しかし、困る人の数で言えば、円安の方がずっと多いのではないでしょうか。
生活者の限度を超えた水準
円安の恩恵を受けるのは、大企業や海外資産の多い人達です。つまり「声の大きい」者が多い。円安で潤うのは一部なのに、その主張は通りやすい。
これに対し、円安による輸入価格の上昇でエネルギーや食品の値段が上がり、暮らしが圧迫されたとしても、生活者の声や主張は、こういった大企業や海外資産を多く持つ人達に比べて小さく、政治や政策担当者らへ届きにくい現実があります。
――ではドル・円相場はどのくらいがちょうどいいのでしょうか。
通貨間で同じモノやサービスを買える力を比べた場合の「購買力平価(PPP)」で1ドル=80円あたりという試算もあります。そう考えると、今は生活者の限度を超えた水準とみることができます。