円安基調は続くのか
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 2024年は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げや日本銀行の金融政策の正常化が見込まれ、外国為替市場では円高・ドル安が進むと予想する声が多い。しかし、ふくおかフィナンシャルグループでチーフ・ストラテジストを務める佐々木融さんは、円安は構造的な要因に基づくもので、円安基調は続くと主張する。その理由とは。

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――2024年のドル・円相場の見通しは。

 1ドル=140~160円で推移するとみています。足元の同140円台前半の水準は、円にとっては天井、ドルにとっては底値に近いと考えています。
 24年は基本的に円安・ドル高基調が続くでしょう。円はこの3年間、ドルをはじめ主要通貨の中でも「最弱」でした。構造要因に基づくもので、大きく変わるとは考えていません。

サービスの収支も悪化

――円安が進むと考える理由について教えてください。

 構造要因として、まず貿易・サービス収支の悪化が挙げられます。国内企業は生産拠点を海外に移し、円安になっても以前のように輸出は増えなくなりました。

 また、検索サイトのグーグルや電子商取引サイトのアマゾンといった米IT企業のサービスを利用する人が増え、サービス収支も悪化しています。モノだけでなく、サービスの収支も悪化が続く構図です。

 次に、インフレ率が名目金利を上回り、実質金利は大幅なマイナスです。つまり円資産だけを持っていると目減りする状況にあります。過去40年間でマイナス幅がここまで広がったことはありません。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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