イラスト:サヲリブラウン

 特筆すべき点はいくつもあります。まず、将来なりたいものが幼少期にハッキリしていた点。次に、そこから夢が変わらなかった点。三つ目、夢を叶えるための丹念なシミュレーションでいくつかの通過点を設定し、逆算して細かく人生を組み立てた点。四つ目、並々ならぬ努力をもって、組み立てたプランを実行し続けている点。ナチュラルボーン・エリート!

 一方、私は子どものころから夢らしい夢を持ったことがありません。いつまでになにをするかも、計画したことがない。行き当たりばったり、楽しく生きています。

 夢があった彼と、なかった私。幼少期からチャレンジを臆さなかった彼と、35歳までそれができなかった私。最初からほしいものがハッキリわかっている彼と、目の前に現れないとわからない私。

 違いは多々ありますが、計画的な彼と無計画な私の「現時点での」共通点を無理やり探すならば「やりたいと思ったらやる」の一点です。

 50歳になり改めて思うのは、やらない理由はいくつでも見つけられるということでした。年齢なんて、格好の言い訳になるでしょう。

 彼のようには生きられないけれど、24年も私は「行き当たりばったり、やりたいと思ったらやる」をテーマに生きようと思いました。だって「やらない」が年齢のせいで「本当にできない」になっちゃう日は、いつか来るから。

AERA 2024年1月1-8日合併号

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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