全盛期を迎えているにもかかわらず、さらなる進化に向けてリスクを恐れない。今年の春季キャンプでは投球フォームの改造に踏み切り周囲を驚かせた。左足を上げず、クイックのような投げ方は反動が使えないため球威が落ちることを懸念されたが、そんな次元の投手ではなかった。新しい投法で登板を重ねる度に球の精度が上がり、23試合登板で16勝6敗、自己最高の防御率1.21をマークした。
飄々とした立ち振る舞い
他球団の首脳陣はうなる。
「今年は3月にWBCが開催されましたし、普通なら投球フォームの改造に踏み切らない。大谷と一緒で目指している次元が違うんですよ。新フォームはメジャー挑戦を見据えてトライしたんじゃないですかね。MLBの球はNPB公式球に比べて肘、肩に負担が掛かると言われ、下半身の反動を使って投げる日本人投手は故障するケースが多かった。対戦した打者に聞いたら、タイミングが取りにくいフォームになり攻略が一段と難しくなったと話していました。直球は155キロ近く出て、150キロ近くのフォークで落差が鋭い。縦の変化だけでなくスライダー、カットボールを織り交ぜ、カーブも超一級品。こんな完成度の高い投手はなかなかいない。メジャーでも間違いなく活躍すると思いますよ」
グラウンド外でも、プロ意識の高さが垣間見える。1軍で活躍して間もなく食生活の改善に乗り出し、専属の管理栄養士を雇って食事を管理している。ストイックな面が見えにくいのは、屈託のない笑顔で飄々とした立ち振る舞いが印象的だからかもしれない。