今年10月、3年連続となる「沢村栄治賞」を受賞した

 大谷が「投打の二刀流」という未知の領域で世界のトッププレーヤーに上り詰めたように、山本も球界の常識を覆す異端児と言える。一昔前、「良い投球フォーム」と定義づけられていたのは、肘を曲げてしならせる投げ方だった。だが、山本は違う。肘を曲げずに二塁方向に伸ばしたまま捕手に向かって腕を振る。いわゆる、「アーム式」と呼ばれる投法だった。この投げ方は肩に負担が掛かるためアマチュア球界で矯正されるケースが多い。驚くべきは、このフォームにプロ入り後に変更したことだ。都城高では肘を曲げたオーソドックスなフォームだった。

「投手5冠」を達成

 「高校時代から従来のフォームだと肘が張りやすかったため、着目したのが体全体を使うやり投げでした。身体の使い方として理にかなっていることに気づき、大化けした。考え方が柔軟で野球界の常識という枠に収まらない。ただ、山本の真似をしたから活躍できるというとそうではない。実際に一緒に自主トレをしていた投手で挑戦したけど断念したケースが少なくありません。うまくボールを操れず、肩や肘に負担が掛かる。山本の投げ方をアーム式と括るのは違うかなと。体の軸、下半身と上半身の連動、左手のグラブの使い方、肩、肘の使い方を含めてすべてがうまく連動している非常に高度な投げ方です」(スポーツ紙記者)

 大幅なフォーム改造に乗り出した18年にセットアッパーで1軍定着し、54試合登板で4勝2敗1セーブ32ホールドをマーク。先発転向した19年に防御率1.95でタイトルを獲得する。その後の圧巻の活躍は周知の事実だ。21年から3年連続で最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振、沢村賞と「投手5冠」を達成。3年連続MVPに輝き、チームのリーグ3連覇に大きく貢献した。

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