試作機は、着地すると左右に割れるように拡張変形し、それが両輪となって走行するように改良。どのような姿勢で着地しても変形できるように、全体の形状はタイヤ型から球体へ作り変えられた。
しかし、平地は走れても、砂の斜面を登ることがほとんどできなかった。
そんなときに思い浮かんだのが、卵から生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんが浜辺を歩くシーンだった。
「あんなに小さな体なのに、子ガメはアリジゴクのようなサラサラな砂の斜面を登ることができる。そうだ、この動きをさせよう、と思いついた」
活かされたのが、動物のような動きをするゾイドなどに使われる「偏心軸」の機構。体を左右に傾けながら両手で交互に砂をかく、クロールのような動きだ。
車輪の回転軸を中心から少しずらし、砂をつかむような動きを交互にさせることで、砂に沈まずに走れるようになった。さらに改良を重ね、「どんな場所に着地しても確実に前に進んでいける」と自信が持てるロボットにたどりついた。
JAXAでSORA-Qを担当する宇宙探査イノベーションハブ主任研究開発員の平野大地さんは、12日5日の記者会見でこう語った。
「(SORA-Qは)日本初の月面ローバーということで、非常にワクワク、そして少し緊張もしています。小さなロボットですが、いろいろな方が思いを込めて作ったものなので、ぜひ成功してほしい」
宇宙ロマン世代が購入
タカラトミーは9月2日、「SORA-Q Flagship Model」の発売を開始した。
これはSORA-Qとほぼ同じ大きさ、同じ変形、走行をするモデルで、専用アプリを使ってスマホで操作し、搭載カメラで撮影もできる。価格は2万7500円(税込)。
同社が「本物」であることにこだわった商品だったが、購入者の多くが大人、なかでも60代が強く興味を持って買っているという。