変形型月面ロボット「SORA-Q」変形前(左)と変形後(右)(C) JAXA、タカラトミー、ソニー、同志社大学=タカラトミー提供

 今年9月に鹿児島・種子島から打ち上げられた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM(スリム)」は、12月25日に月を周回する軌道に入り、来年1月20日の着陸をめざして飛行中だ。スリムは、チョロQで知られる「タカラトミー」とJAXAが共同開発した小型ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」を搭載。おもちゃづくりで培ったノウハウを詰め込んだ手の平サイズのロボットが、月面走行に挑戦する。

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 JAXAなどによると、SORA-Qは野球のボールほどの大きさで、月探査機「スリム」が月面に着陸する直前に分離、月面に到達する計画になっている。

 月面に着地したSORA-Qは、左右に割れるように変形。外殻部分を車輪のように回転させて走行する。移動しながら月面の様子を撮影し、それを別の探査ロボット経由で地球に送る予定だ。

 タカラトミーでSORA-Qプロジェクトを担当する石井孝典さんは、

「われわれは、ロボット玩具『トランスフォーマー』に代表される変形技術や、『ゾイド』の動物のような動きをシンプルな機構で実現することを得意としています。そのアイデアがSORA-Qに活かされています」

 と話す。

トランスフォーマー「PF SS-05 オプティマスプライム」ロボットモード。SORA-Qの開発では、変形機構のノウハウが活かされたという=タカラトミー提供

 乗物などからロボットへ変形する「トランスフォーマー」シリーズが誕生したのは1984年。超ロボット生命体が宇宙を舞台に敵と戦う壮大なストーリーで、2007年に実写映画化されると世界中で大ヒットした。
 

ゾイド・シールドライガー(1987年)。SORA-Qでは、ゾイドの小型駆動のノウハウが活かされている=タカラトミー提供

「ゾイド」シリーズ(1983年発売)は恐竜や動物などをモチーフにした“メカ生命体”で、キットを組み立てると、ゼンマイやモーターによって生き物のように動き出す。
 

「宇宙産業とおもちゃ産業は全然違う分野のように見えますが、おもちゃの開発において大切にしてきたことと、宇宙事業において求められる要素が合致しました」

 と、石井さんは語る。
 

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JAXAが募集した「昆虫ロボット」