アニメの深い物語性と最新技術を駆使した映像に、大人世代が夢中になっている。かつて「子どものためのもの」と言われていたアニメは、いま誰に向けて何を描いているのか。AERA 2023年12月25日号より。
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帝国データバンクの調査では、22年のアニメ制作市場は2703億円。コロナ禍で停滞した市場に活気が戻り、3年ぶりに前年を上回った。「ONE PIECE FILM RED」や「呪術廻戦0」など劇場アニメのヒット作が続出し、テレビアニメでも「SPY×FAMILY」「ぼっち・ざ・ろっく!」など話題作も相次いだ。
アニメーション研究家でデジタルハリウッド大学特任准教授の津堅信之さん(アニメ史)は、「大人に刺さるアニメ」には、いくつかのパターンがあると分析する。
その一つは、かつて過ごした昭和ノスタルジーを感じられる映画。1993年の初劇場版以来、毎年新作が公開されてきた「クレヨンしんちゃん」シリーズは、30年にわたって子どもに愛されてきた。だが、20年ほど前から劇場に大人が集まるようになったという。
「子ども向けの漫画ではありますが、劇場版は大人やシニア世代の郷愁を誘うストーリーや場面デザインが多く見られます」
毎週放送されるテレビアニメは観ていなくても、年に一度の劇場版は必ず見る。そんな大人ファンを増やしている。
「名探偵コナンもある時期から、大人を意識した描写が入るようになりました。『黒鉄の魚影(サブマリン)』(23年)の最後のセリフに大人はキュンとしますが、ピンとこない子どもも多いと思います」
実験的なアニメが続々
ほかにも、かつてはやった作品を現代風に仕上げたリバイバルアニメなど、主に五つにわけることができるという。
「未熟な若者が成長していく姿を描いたものが多いのが日本アニメの特徴です。可能性は未知数ですが、中高年やシニアを題材にした作品を開拓すれば、さらに市場は広がるのでは」
と津堅さんは期待する。