写真はイメージです(PIXTA)

 ソロキャンプの人気が広がる一方で、望んでもいないのに声をかけてくる「教え魔」や、相手を怖がらせるだけの「声かけ魔」など、一人で静かに過ごしたい女性キャンパーへの迷惑行為に焦点が当たったこの1年。愛好家らはSNSなどでマナー啓発を続けたが、状況は改善されたのか。

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 とあるキャンプ場。静かな夜に、女性ソロキャンパーがテント内でくつろいでいたところ、突然、男性キャンパーがテントのファスナーを勝手に開けて中をのぞき「怖くない?」などと声をかけてきた。

「こうすると燃えやすくなるよ」。女性が一人でたき火をして雰囲気に浸っていたら、男性が頼みもしないノウハウを教えにきた。男性の話は次第にソロキャンプ歴の自慢話へと移行し、一人の空間をぶち壊された――。

 ソロキャンプでは、たき火の跡をそのまま放置したり、たき火後の炭を土に埋めて帰ったりする、いわゆる「たき逃げ」行為やゴミのポイ捨てに加え、近年は男性が一人でリラックスしている女性に声をかける「声かけ魔」や「教え魔」と呼ばれる迷惑行為が問題視されてきた。こうした被害を訴える動画がSNSに投稿され、賛否を巻き起こすケースも散見された。

女性キャンパーの減少を危惧

 下心で女性に近づくのは論外としても、本人曰くの「親切心」が動機だったケースもある、ちょっと複雑な迷惑行為。

 そんな現象に焦点が当たった2023年も終わりが近づいてきたが、状況は改善されたのか。

「『教え魔』と『声かけ魔』については、良い方向に変わってきていると思っています。SNSに被害動画が投稿されて反響を呼んだことで、被害を怖がって女性キャンパーが減ってしまうのではないかと危惧しましたが、逆に、それ以降も緩やかに増えてきています」

 そう話すのは、健全なソロキャンプの普及を進めてきた「日本単独野営協会」の小山仁代表だ。設立から約5年半で、会員数は2万5千人にのぼる。

 同協会にも迷惑行為の被害情報は寄せられており、マナー啓発の活動を続けてきた。 

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「声をかけたい派」が反論したことで迷惑行為に焦点が