ケルセチンとフィセチンはいずれも、細胞内で種々のタンパク質をリン酸化する複数のリン酸化酵素の活性を抑制することにより、このような機能を発揮すると理解されています。また、老化細胞を体内に注入した老化促進マウスにケルセチンを含む合剤を投与すると歩行速度、筋力が有意に改善されました。同様に20カ月齢のマウス(マウスの寿命は2年余程度ですので高齢マウスです)に4週間、ケルセチンを含む合剤を経口投与したところ歩行速度の上昇、筋力の増加が認められました。

 この合剤の投与により寿命の延長も確認されています。歩行速度の上昇、筋力の増加は骨格筋機能維持による自立活動時期の延長、つまり健康寿命延伸に結びつくものです。以上の知見は食品成分の機能が侮れないものであることを示す興味深い研究成果です。

 こういった最新の研究成果を紹介するとすぐにでも健康寿命が延び、100年人生をまっとうできそうな気になりますが、ことはそう簡単ではありません。私たちの体内で生じる老化細胞は必ずしも、加齢でのみ産生されるものではありません。

 私たちが組織的な傷害を負ったとき、時間経過とともに治癒・快復しますが、このときにも障害部位付近では老化細胞が出現し、治癒の手助けをします。障害からの快復には老化細胞の出現が必要であり、老化細胞の出現を一様に抑えることについてはさらに精査が必要でしょう。つまりセノリティクスが諸刃の剣とならないよう、その効果が健康維持・増進へと向かうためのプロトコールを樹立する必要があります。

 複数のフラボノイド類が抗老化による健康寿命の延伸に役立つということは、食の力を賢明に利用し、健康維持を図ることの重要性を示唆しています。時間経過とともに徐々に進行する老化は正常な生命現象であり、病気のように薬で治すものではなく、日常的な食生活の中で食品成分を賢く活用して、その進行を遅らせることは有効であると言えます。

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