アンモニアはpHを上昇させるため、老化細胞内が強酸性に傾かないように働きます。こうして老化細胞は自身の生存のため、グルタミナーゼ発現を上昇させています。実際、幼若マウスと老齢マウスの組織の細胞内グルタミナーゼ発現量を比較すると、老齢マウスで高いことが知られています。

 これらの知見により、グルタミナーゼ活性の阻害剤を用いると老化細胞ではpHが低下し続けて細胞死が引き起こされ、セノリシスが実現します。また正常細胞ではグルタミナーゼ活性を阻害しても重篤な影響は出ないと考えられており、グルタミナーゼ阻害剤を加齢マウスに投与すると肥満性糖尿病、動脈硬化症、および非アルコール性脂肪肝の症状改善に有効であることがわかりました。

 このようにセノリシスを引き起こす成分をセノリティクスと呼び、老化細胞を除去して抗老化を引き起こすことが期待されています。

玉ねぎ、イチゴ……抗老化作用をもつ食品とは?

 細胞増殖を抑制する因子として知られているp16、p21は老化細胞で発現が上昇し、これらの発現を抑制する化合物はセノリティクスとしての機能を発揮することが予想されます。また老化細胞によって分泌され、周辺細胞の老化を促す種々のSASPの発現・分泌を抑える化合物もセノリティクスの候補化合物と考えられています。

 こうして見出されたのがダサチニブという薬物と玉ねぎなどに含まれるケルセチン(フラボノイド類)を混ぜた合剤、あるいはイチゴなどに含まれるフィセチン(フラボノイド類)です。これらはいずれも食品由来のフラボノイド類を含んでいるうえに、経口的に投与することで効果を発揮します。

 特にケルセチンは玉ねぎなどに含まれ、日常的な食生活で摂取量の多い食品成分です。またフィセチンについては、新型コロナウイルスに感染させた加齢マウスにフィセチンを投与したところ、高い確率で死亡を抑制するという研究結果が示されました。セノリシスにより炎症反応が低下し、感染により産生された抗体がウイルス駆除能力を高め、結果的に死亡率を下げたということです。

暮らしとモノ班 for promotion
タオル研究所のタオルが圧倒的人気! Amazonのタオル売れ筋ランキング
次のページ