イギリス在住で「女性の権利としての安全な中絶・国際キャンペーン」コーディネーターのマージ・ベラーさん。初来日して11月に講演(主催ASAJ)(撮影/門間新弥)
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「経口中絶薬」は世界の多くの国で普及しているが、日本では今年4月に承認されたばかりだ。中絶薬の承認時についた使用条件や日本の中絶手術の問題点について、「女性の権利としての安全な中絶・国際キャンペーン」コーディネーターのマージ・ベラーさんが語る。AERA 2023年12月18日号より。

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 私が中絶の課題に向き合うようになったのは1970年代のこと。自らの中絶体験からです。当時、イギリスでは若い女性を中心とした活発な全国中絶キャンペーンが展開されていて、私は中絶後間もなく、その運動に参加しました。中絶反対派の国会議員の多くが、67年に制定された中絶法を制限する法案を提出していたからです。

 世界の女性たちは草の根の運動で、中絶の権利を勝ち取ってきました。84年には、オランダで開催された国際的な女性会議の成果で「WGNRR(リプロダクティブ・ライツのための女性の世界ネットワーク)」が創設され、世界各地にネットワークが広がりました。

撮影/門間新弥

 運動の広がりには、80年代に始まった「経口中絶薬」の研究開発が大きく関係しています。中絶薬はこの20年で非常に広まり、今や多くの国で最も一般的な中絶の方法となっています。

 ひるがえって日本では、中絶薬は今年4月にようやく承認されたばかりです。しかしながら、日本においては、産婦人科医ら利害関係者が、「たとえ妊娠初期であっても、薬による中絶は入院可能な医療施設で、病院の管理のもとで行わなければならない」と主張しています。これは私が知る限り、世界のどの国でも要求されていない厳しい制限であり、問題だと考えます。

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