岡ちゃんも楽ちゃんも面と向かって口説くわけじゃなく、二人ともゴルフが好きだから「今度一緒にゴルフに行くか」っておネエちゃんを誘うんだけど、俺はゴルフをやらないから「今度、地方でプロレスやるから来るか?」っていうくらい。ほとんどのおネエちゃんに「えー」って言われたよ(苦笑)。ゴルフはいい武器だ。ウッドは上にも下にも使えるから便利だね。うん(笑)。

 銀座は三沢光晴も来るようになって、あいつは寡黙に飲んでいるんだ。おネエちゃんたちも誰だか分からないし「三沢っていうんだよ」って教えても、「ふーん」っていう感じ。

 でも「実はタイガーマスクなんだ」って言うとみんな驚くし、あいつもポケットからタイガーマスクを取り出して、おネエちゃんたちは大騒ぎだ! そうなるとあいつが一番モテるし、それに味をしめて、毎回ポケットからマスクを取り出していたよ(笑)。

天龍さんのモテ期は?

 俺が一番モテていたのは、22~26歳くらいのときと、30代後半かな。30代後半になるともう結婚もしていたが、まあ、口八丁、手八丁を覚えるからね。若いころはモテても女の扱い方が分からないし、銀座で飲んでいても女性がハイクラス過ぎて、「イモっぽいあんちゃんだなあ」と見透かされている気がして、気後れして楽しめなかったよ。

 ホステスに位負けしていたんだね。ウィットに富んだ話し方と社交性と処世術を身に着けないと、何百人という男を相手にしている百戦錬磨のおネエちゃんには、太刀打ちができない。若いころは銀座の居心地が悪くて、錦糸町のキャバレーのおネエちゃんの方が性に合っていたよ。

 30代後半になると、ようやく銀座のおネエちゃんと位負けしなくて対等に口きけるようになって、岡ちゃん、楽ちゃん、寿司屋の小沢のオヤジたちと同じようにやり取りして、そうなると銀座が楽しいってことに初めて気づくんだ。ホステスがきれいすぎてとっつきにくいという気持ちがあるうちは、そういうところに行っちゃダメだぞ!

(構成・高橋ダイスケ)