雅子さまが愛子さまにやさしく手を添えて「あいこ」と新年の書き初めをした=2005年1月1日、宮内庁提供

もこもこの子犬「由莉」をのぞき込む

 長く続く療養生活であっても、雅子さまは「母」として、愛子さまに深い愛情を注ぎ続けた。

 2005年1月、3歳になった愛子さまの体を包み込むように手を添えて、新年の書き初めをする雅子さま。その様子からは、母と娘の絆が伝わってくる。

 2006年11月には、一般の七五三にあたる「着袴の儀(ちゃっこのぎ)」が行われた。数え年の5歳で初めて袴を着ける子どもの健やかな成長を願う、皇室の伝統的な儀式だ。
 

「着袴(ちゃっこ)の儀」を終えて、桃色の道中着姿で参内に臨む4歳の愛子さま。装束で動きづらい愛子さまをそっと支える雅子さま=2006年11月、東宮御所、代表撮影/JMPA

 儀式を終えて皇居に参内する際は、桃色の袿(うちぎ)と丈の短い切袴(きりばかま)の「袿袴」に着替えるものの、4歳の愛子さまには重くて大変な衣装だ。

 雅子さまが小さな愛子さまを支えるように手を伸ばす写真からは、ほほえましいご一家の様子が伝わってくる。
 

愛子さまの相撲好きは有名。大相撲秋場所の初日に東京・国技館で観戦。応援する愛子さまを幸せそうに見守る雅子さま=2006年9月、東京・国技館(代表撮影/JMPA)

 人柄は、ふとした仕草からも伝わる。

 2009年のゴールデンウィークに、静養のために栃木県の御料牧場を訪れたご一家。JR宇都宮駅に到着した愛子さまが抱えていたのが、愛犬の「由莉」だった。

御料牧場に向かう皇太子(当時)ご一家。愛子さまから子犬の由莉をやさしく受け取る雅子さま=2009年5月、栃木県のJR宇都宮駅、代表撮影/JMPA

 駅舎からトコトコと歩いてきた7歳の愛子さまの両腕からは、もこもこした子犬のお尻と尻尾がはみ出ていた。愛子さまが抱えるには、ちょっと大きかった。

 愛子さまの目線までかがんで受け取り、腕の中におさまった子犬を何度ものぞき込む雅子さまには、小さな命に対する優しさがあふれていた。
 

学校で愛子さまと昼食を一緒に食べ

「皇太子」「天皇」であると同時に「父」として、「皇太子妃」「皇后」であるとともに「母」として、日常を大切にしてきた天皇陛下と雅子さま。等身大の家庭人としての生き方は、愛子さまのメッセージからもうかがい         知ることができる。

 2022年、愛子さまが成年を迎えての記者会見。愛子さまは、

「両親は、私の喜びを自分のことのように喜び、私が困っているときは自分のことのように悩み」

「一番近くで寄り添ってくれるかけがえのない有り難い存在」

 と、自身に寄り添い続けてきた父と母への深い感謝を示した。
 

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公の「けじめ」も、家庭人としても