ジュリーの本当の凄さに気づいたのはこの後

 もちろん、きら星の如きヒット曲の連打は感涙ものだった。特に、筆者(53)は2018年、樹木希林さんの訃報に際し関連記事を準備中、有名な「ジューリー!」(TBSドラマ「寺内貫太郎一家」で、樹木さん演じるおばあさん「寺内きん」が身もだえしながら叫ぶセリフ)を動画で再見したのが縁(?)で、ずぶずぶと“ジュリー沼”にハマっていった新参者のファンだ(ちなみに12歳からそれまでデヴィッド・ボウイ一筋でした)。子どものころのスーパースター「ジュリー」を生で見られる僥倖(ぎょうこう)を、このラインナップでかみしめた。「ありがとう!サンキュー!ありがとうね!!!」。1曲終わるごとに繰り返されるおなじみのフレーズも聴けてうれしい。

開演1時間以上前からファンは長い列をつくった

 けれども、新参者だからこそ特筆したい。ジュリーの本当の凄さに気づいたのは、この後からだった。

 会場には60歳代以降をコアとする「第一世代」が多いが、それこそドタキャン騒動で幼少期以来、再注目した40~50歳代前半のファン層に加え、YouTubeなどの動画がきっかけという高校生もいる。目の前で叫び、ヘッドバンキングし、ステージを駆ける75歳の姿に等しく圧倒されたところへ、最新曲「LUCKY/一生懸命」(2022年)が始まる。「〽無欲ヤバイそれ!COME ON!~」「〽老後の楽しみまだくたばれないLIVE!」。ジュリーのまっすぐで強いメセージが新旧のファンに染みた。「ROCK'N ROLL MARCH」(08年)、「時計~夏がいく」(1995年)、「君をいま抱かせてくれ」(同)、「愛まで待てない」(96年)。ラストに向けて続く90年代以降の曲に、むしろ手拍子は熱を帯びていった。そして「いつか君は」(96年)。昨年公開された主演映画「土を喰らう十二カ月」のエンドロール曲だ。「ジュリーは今を生きる現役のスターなんだ」。誰もが、あの時、実感しただろう。

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