音楽評論家は“声の持久力”に着目
「沢田研二は本当に恵まれた音楽家だと思う」
音楽評論家のスージー鈴木さんは話す。
この日のライブのアンコールは、アカペラで披露された「河内音頭」の後、ザ・タイガースの「花の首飾り」(68年)、「君だけに愛を」(同)と続き、ザ・ローリング・ストーンズのカバー曲「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」、「サティスファクション」で終演となった。
「沢田研二という人は数え切れないヒット曲を持ち、毎年のように新曲を作り、ライブを続けてきた。トラブルがあっても変わらずファンがついてきてリベンジも果たし、バンド時代のカバー曲で今のライブを締められるなんて、誰もができることじゃないですよ。仲間もきっと、沢田さんが好きだから支えてきたんだろうと感じます」(鈴木さん)
さらに音楽的に高く評価するのは、「無理のない発声」という。
「原曲のキーで数時間でも歌いきることのできる“声の持久力”を長い時間をかけて培われたんでしょう。柴山和彦さんのエレキギター1本だけがバックという超シンプル編成で回った2018年からの『OLD GUYS ROCK』ツアーで、さらに表現力を鍛えただろうことは間違いない」(同)。
18歳でデビューして来年2月で57年になる。どの時代も同調圧力に屈せず、己を貫き、支えてくれる仲間がいて、新たなファンも獲得する。スージー鈴木さんはジュリーを「日本最高・最強かつ、最年長のロックンロールスター」と評した。
「近くて見てごらんなさい。スターの顔ですよ」
盟友・岸部一徳は、今年6月にBS-TBSで放送された「沢田研二 華麗なる世界」で、ジュリーの来し方を振り返り「僕流に言えば『ジュリーに負けなかった沢田研二』」と話した。
TBSのドラマプロデューサーだった龍至政美さんが「ビスコンティの幽暗な闇の中にほの見える美少年のように完璧に美しかった」と、雑誌の寄稿で表現したように、往時のジュリーは昭和の成熟した男性さえ惑わした。その美貌ゆえに、自然に歳を重ねてきた変化を揶揄する声もなくならない。そんな人たちには、筆者が今年4月にインタビューした際、岸部さんが静かにつぶやいた言葉を贈りたい。
「みんな沢田を太ったとかなんとか言うけどね。近くで見てごらんなさい。まぎれもないスターの顔ですよ」
虎の着ぐるみ&はっぴ姿で咆哮
声出しがOKになった会場で、それでもまだコロナ禍前よりは遠慮がちに飛んだ「ジュリー!」の声援は、どれも嬌声というより、ロックンロールで在り続けるスーパースターへ向けた、あふれ出る感謝の響きだったと思う。
祇園山笠の中州流(なかすながれ)の法被をまとった虎の着ぐるみ姿で、阪神タイガースの日本シリーズ優勝を喜んで(たぶん)咆哮する姿もおちゃめでした。河内音頭であなたが謡った「共に長~生き~いた~し~ましょ~」の言葉を心に抱いて、次のライブまで真面目に生活を送ります。
ありがとう!サンキュー!ありがとうね!!!ジュリー!
(渡部 薫)