さらに、髪の色をどうするかなど、従業員同士の会話も格段に増えたそうだ。

 今年の春には、髪を真っ赤にしたが、似合わないと不評を買い、金色に戻したという神谷さん。

「僕自身は、金髪にしてみてプラスになったことが多かったと実感しています。お客様や職場の人から話しかけられる場面が増えて、コミュニケーションにつながりました。お客様が僕を認識してくれる、『的』のような役割も果たしているように思います。何のために今まで、髪色のルールがあったんだろうって率直に思っています(笑)」

 増渕さんによると、ユニーではルール緩和以降、特に女性従業員で髪を染めた人が多かった。若者だけではなく、中高年の従業員たちもおしゃれに白髪染めしたいという欲求があったようだ。紫やピンク、赤に青……想像がつかないが「レインボーカラー」にした女性店員もいるという。

モチベーションが上がる→明るくなる→客にも伝わる

 ルール緩和から1年。客から寄せられた意見はゼロではなかったが、予想外に少なかったという。

「時代がそうなったのかと、実感しました。従業員は自分らしい髪にできることで、モチベーションが上がる。従業員が明るくなり店が和気あいあいとした雰囲気になれば、その明るさはお客様にも伝わる。そうしたメリットは、最終的には会社に還元される。身だしなみを自由にして、初めて気づかされたことでした」(増渕さん)

 神谷さんと同じように、従業員同士のコミュニケーションにつながったとの声が、スーパーの各店舗から寄せられているという。

 また、別のプラス効果もあった。ルール緩和以降、スーパーのアルバイトに応募する学生が増えたのだ。

「ルール緩和を検討するなかで、アルバイトの応募が増えることへの期待値はそれほど大きくはなかったんです。髪が黒じゃなくてもアピタとピアゴなら働けると、選んでくれるきっかけになったのだと思います」(増渕さん)

 これもまた、ひとつの気づきである。

「自由」の解釈は人それぞれで、運用は簡単ではない。

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